更新日:2019年2月20日

 

 宮城県南部に位置する大河原町。町の中心を流れる白石川の堤に咲き誇る桜並木は「一目千本桜」と呼ばれ親しまれています。総延長は8kmほどにわたり、日本でも有数の桜の名所として、桜の季節には国の内外からたくさんの観光客が訪れます。
 この桜並木は、大河原町出身の実業家 高山開治郎が大正12年に約700本、昭和2年に約500本の苗木をまちへ寄付・植樹したことからはじまります。
 開治郎は江戸時代から続く由緒ある旅館の長男として、大河原町に生まれました。しかし、開治郎が15歳のとき父親が亡くなりました。そのため、開治郎はふるさとを離れ、東京で働きに行かざるを得なくなってしまったのです。つらく厳しい生活のなかで、いつも思うのは生まれ育った大河原町のまち並み、残雪をいだいた雄大な蔵王連峰、清らかな流れの白石川でした。
 苦難の末、東京での事業に成功を収めた開治郎ですが、いつでも心はふるさと大河原町にありました。「何かふるさとのために出来ることはないだろうか…」そう考えていたある日、これまで氾濫を繰り返していた白石川の改修工事が完成するとの知らせが届きました。「今こそふるさとに恩返しをするべきだ。何か心に残るものを、みんながずっと喜んでくれるものを贈りたい…」そうして、さくらの苗木が植樹さられたのです。
 開治郎の植樹から90年あまりが過ぎ、大木の桜並木となった「一目千本桜」は、今でも人々の心を癒し続けています。
 そうしてこれまで「一目千本桜」は、開示郎の志を受け継いだ地域の人々の手によって守られてきたのです。
 柴田農林高校では、桜が病気にならないよう剪定作業を行うほか、激減してしまった幻の品種「センダイヨシノ」の復活や普及活動にも努めています。大河原ライオンズクラブでは毎年桜並木の補植を実施。大河原さくらの会では、大河原のさくらを全国に広げるためのPR活動なども行なっています。また、毎年3月には地域住民が総出で河川敷の清掃も行います。
 「一目千本桜」は、大河原町の人たちとって、とても特別なものであり、とても大切なものなのです。

 

息をのむほど美しい 満開の桜並木「一目千本桜」を歩く

 

 うららかな日差しに、春風がそよぎはじめる4月。さくらの開花に合わせて「おおがわら桜まつり」を開催します。
 おおがわら桜まつりでは、お花見屋形船を運航し、悠々とした川の流れに揺られながら両岸の桜並木を眺めることができます。水面に映る満開の桜や、風で運ばれゆれる花びらには独特の風情を感じていただけることと思います。
 大河原町駅より北東に徒歩20分ほどに位置する、白石川の「韮神堰(ニラガミゼキ)」は、蔵王連峰を背景に白石川沿いの「一目千本桜」を一望することができる、他にはない絶景スポットです。咲き誇る桜のうす紅色と、雪が残る蔵王連峰の白、光に煌めく白石川の群青色に、澄み渡る空の薄水色。それらのコントラストが奏でる絶景は、思わず息をのんでしまうほどの美しさです。
 標高94m小高い韮神山の上にある「韮神山展望台」からは、帯びを引いたようにどこまでも続く一目千本桜の桜並木が一望でき、壮観です。また、空が暗くなりはじめるころには、ライトアップが実施され、昼とは違う幻想的な夜桜を楽しむことができます。
 期間中は、「おおがわら桜まつり」の会場にて、地場産品や特産品のほか、町自慢のお店が提供する特別メニューやお花見弁当、桜菓子なども販売します。
 ぜひ、大河原町のシンボル的存在「一目千本桜」へ、心もおなかも満たしにいらしてください。