『命を守る最後のとりで』と地域医療の課題解決に、向けて。
~『仙南医療圏地域医療推進協議会』設立の意義~
去る8月18日に、『仙南医療圏地域医療推進協議会』が設立されました。仙南2市7町の首長が構成会員となり、庶務はみやぎ県南中核病院(以下、中核病院。)が担い、会長には私が就任することとなりました。『命を守る』ために中核病院が果たす役割と、地域医療の抱える課題への共通理解が醸成された証であり、全国的にもこの協議会の設立は余り例のない取組です。
さて、地域医療環境に影響を及ぼす最大の要因は、人口推移と患者動向ですが、全国の状況同様に仙南地域の著しい人口減少も大きな課題となっています。ピーク時から3万8千人程減少し、高齢者の人口すら減少し始めている自治体が目に付くようになりました。そこで国・県は、新たに『地域医療構想』を掲げ、団塊の世代を考慮した地域医療の将来像を策定しています。病院機能に応じて、①集中治療が必要な重症患者向けの高度急性期、②一般的な手術をする急性期、③リハビリ向けの回復期、④長期入院の慢性期に区分し、公的病院の再編を求める方針を打ち出しています。
仙南医療圏では、公立刈田綜合病院(以下、刈田病院。)と中核病院が重点地区支援病院に指定されましたが、刈田病院の公設民営化への移行により機能分化の議論も頓挫してしまいました。現在の中核病院は、34診療科・310病床・医師(研修医含む)111人等を有し(令和6年4月時点)、三次救急医療(一次・二次では対応が難しい命に関わる重症患者対応)を一手に担っています。もはや、中核病院は1市3町の病院ではなく仙南地域全体の『命を守る最後のとりで』となっていると認識しているところです。
そして、この協議会で最初に議論すべき課題は、財政的に不採算部門である三次救急医療対応について、構成市町以外の自治体にも応分の負担をお願いできないかということです。令和5年度の構成市町(角田・柴田・村田・大河原)と構成市町村以外(白石・蔵王・七ヶ宿・川崎・丸森・その他市町)の外来及び入院の患者数の比率を下記の表で示しています。構成市町以外の比率は年々増加し、中核病院の財政赤字が膨らむ要因の一つになっています。
しかし、中核病院は、救命救急センターとしての役割を担っており、令和5年度は、4,315台の救急搬入患者を24時間体制で受け入れました。そのうち三次救急患者数は、1,020人を数えました。与えられた使命をしっかり果たしていることは、我々にとっても大きな誇りであり、協議会設立に対する構成市町以外の自治体の理解への後押しになったものと受け止めています。救急医療対応についての応分の負担のお願いを求めてから、5年超の年月を要してしまいましたが、今後の議論の収束に心から期待を寄せているところです。
地域医療に関する説明は難しく、これまでつい避けがちであったことを反省しています。今回の協議会設立の意義をきっかけに、地域医療の大切さと中核病院の果たす役割への住民理解の高まりを切に願うところです。また、ご要望の高い中核病院での分娩復活に道が開けるように、協議会として後押し出来ないか、思いを馳せるこの頃です。
(9月17日記)