2024年5月24日 町長コラム(広報おおがわら令和6年6月号「さくら並木」)

『消滅可能性自治体』リストの公表(新増田レポート)に思う。
~全国町村会・政務調査会、小田切徳美教授(明治大学)講演より~

 

 4月24日に、新たな地域別将来推計人口に基づく『消滅可能性自治体』リスト(新増田レポート、人口戦略会議)が公表されました。大きな衝撃を持って受け止められたかたが多かったことと思います。『消滅可能性』の規定を、20・30歳代の女性が半減(2020~50年)する自治体と規定したもので、その全てが名指しで9分類に分けられています。
 因みに、県内35自治体における本町の順位は、仙台市と岩沼市の間の『消滅可能性』の低い方から6番目という分析でした。しかし、この女性人口が半減するという一面的な指標を持って線引きすることに、少なからず違和感を覚えています。現在、町村はじめ全国の自治体が、人口減少への対応や独自の地域づくりに懸命に取り組んでいますが、この努力や取り組みに水を差しはしないか心配です。
 今回の推計では、『消滅可能性』の規定が今ひとつ不明であり、恰も人口減少・少子化問題の原因が全て自治体にあるかのような印象を与える発表の仕方となっています。本来、このような事態となった大きな要因は、東京圏への一極集中と少子化であり、一自治体の努力だけで抜本的な改善が図れるものではありません。また、本町だけが良ければいいというものでもなく、この分類が自治体の分断(格差の意識)を助長することに不安を感じています。先ずは、国全体としてこれまでの政策を検証し、効果的な対策を講じていくことこそが必要であると考えるところです。
 期しくも、本町が最も重視する『Well‐being(心身と社会が健康で幸福な状態が継続すること)』こそが社会全体の目標であり、実はこの幸福度の向上が地域づくりの国際基準となっているのです。地域の持つ可能性を女性の人口推移のみで『消滅可能性』と『自立持続可能性』と視るのは、これから取り組む自治体の地域づくりへの意欲に悪影響を及ぼすことになりはしないか懸念されてなりません。
 過疎対策や地域マネジメントに詳しい小田切徳美教授(明治大学)は、『初めて増田リポートが出た10年前は、移住者や特定の地域と交流を持ち続ける関係人口が増え始めた時期だったが、『消滅可能性都市』という言葉がネガティブなインパクトを与えてしまい、自治体を諦めさせ、萎縮せてしまった面があった』と指摘。今後について、『自治体の格差が拡大している。人口減少を緩和する少子化対策も重要だが、地域住民が住み続けられる適応策がより重要になる。関係人口を増やし、地域住民と移住者が起業したり、地域内での経済循環を促して、にぎやかな過疎を目指すべきだ。』と提案しています。
 本町は過疎ではありませんが、今後一定の人口減少が進む中でも『Well‐beingなまちづくり』による安心して暮らすことができるポテンシャルを維持し続けなければなりません。国には、先進的に頑張っている地域が『どのように取り組んだのか。』という適応策に視点を移して、それぞれの自治体の可能性を一層力強く支援いただくことを期待したいと思います。
                                                 5月17日記

2024年5月24日 | コメント(0)

お問い合わせ先