2020年1月31日 町長コラム(広報おおがわら令和2年2月号「さくら並木」)

~仙南地域最大の課題 これからの地域医療を考える~

 今、報道をにぎわす『地域医療構想』という言葉をご存知でしょうか。将来人口の推計をもとに団塊の世代が75歳となる2025年に必要となる病床の機能別必要量を予測し、地域での調整会議を通じて病床機能の分化と連携による効率的な医療提供体制を実現する取り組みです。堅苦しい説明ですが、昨年秋に厚労省が発表した『全国424病院の統廃合を含めた再編の検討を求める実名公表』が話題となり、反発と波紋を呼んだ件と言えばお気付きの方も多いのではないでしょうか。 
 そして、1月末までにこの構想に基づく地域の中核的病院の『重点地区指定』がなされる筈で、県南では財務状況の改善が急務とされる中核・刈田の両院が指定されるものと受け止められています。県と東北大学病院が示した考えでは、中核病院は救急や外科手術などの急性期を、刈田病院は病床のダウンサイジングを行いリハビリや透析の回復期を担い、医療機能の分化を図りながら将来の再編・ネットワーク化につなげるとされています。
 しかし、この様な大きな課題に取り組もうとする最中に、中核病院での分娩休止という衝撃的なニュースが飛び込んできました。(10月より仙台や岩沼の病院での産科セミオープンシステムへ移行)人口減少と同時に進む少子高齢化の中にあって、仙南医療圏の周産期母子医療の環境が大きく変わろうとしています。仙南2市7町と中核病院企業団として、年末に県知事への要望活動を即座に実施しましたが、更なる人口減少への危機意識など仙南医療圏全体にとっての社会問題として共通に認識されることが重要でした。
 本町は、診療所15施設、歯科診療所16施設、薬局16施設が存在する医療環境に恵まれた町です。また、地域包括支援センターが活発に機能し、行政区や老人クラブでの健康教室が早い時期から実施され、介護・認知症等の予防活動も盛んに行われてきました。その結果として、住民の健康意識が高く特に後期高齢者の健康診査の受診率の高さや、要介護認定率の低さなどは県下トップの状況です。しかし、地域医療が抱える課題の前ではこの自慢の種も霞んでしまいそうなのが残念でなりません。
 かつて、NHKの『視点・論点』という番組で、『これからの医療を考える』と題する識者の解説がシリーズで放映されました。(1)2025年の医療・介護の姿は、(2)問われる地域総合力、(3)地域まるごとケアとは、というテーマでしたが、なぜか『社会保障と税の一体改革』というくくりでの論説であったことが印象に残っています。1990年代後半から約10年間に社会保障の費用が抑制されたことに起因しているものと認識しています。
 その後の医療改革は、医療・介護関係の法律の大幅な改正を経て、効率的で質の高い医療の実現を目指し、地域包括ケア体制(地域で支えあう暮し)の構築、そして都道府県が医療圏ごとに『地域医療構想』を策定することへとつながってきました。介護保険制度も在宅医療と介護の連携の推進や市町村が介護予防・日常生活支援事業を行うとするなどの改革がなされてきました。
 本町の推進する『長期総合計画』には東日本大震災や激甚化・広域化する自然災害などに対応し、『"生命"(いのち)と安全を守る』ことを行政の基本的使命として掲げています。併せて、医療・介護・福祉施策の充実による暮しの安全・安心を目指すとしています。仙南地域に限らず、地域医療の抱える課題解決が人の"生命"(いのち)を守り、人と人、人と地域をつなぐ大きな行政課題となっていることを改めて自覚したところです。
                                                            2020年1月16日

2020年1月31日 | コメント(0)

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