2023年9月28日 町長コラム(広報おおがわら令和5年10月号「さくら並木」)

仙南医療圏(2市7町)の現況と課題
~命と健康を守る『みやぎ県南中核病院』への期待~

 国は2025年に向けて、病床の機能分化や連携を進めるために、医療機能(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)毎に医療需要と病床の必要量を推計して定める『地域医療構想』の策定を県に求めました。現在、仙台医療圏での県が主導する4病院の再編構想(県立がんセンターと仙台赤十字病院を名取市に、東北労災病院と県立精神医療センターを富谷市に)に関する様々な話題が、連日のように報道されています。この件へのコメントは控えますが、仙南医療圏における『地域医療構想』の示す医療提供体制についても高い関心が生まれ、住民意識の高揚につながることを切に期待しているところです。
 仙南医療圏で地域住民の命と健康を守る砦となっているのは、『みやぎ県南中核病院(以下、当院)』であることは明らかな事実です。当院は、角田市、柴田町、村田町、大河原町が開設者の組合立の病院です。現在は、地方公営企業法の全部適用を受けた企業団として運営され、昨年8月で20周年を迎えました。令和5年4月現在34診療科を備え、常勤医師73名、前後期研修医師36名、常勤看護師(助産師・保健師を含む)324名、薬剤師他技師134名の医療スタッフによって診療を行っています。令和4年は、約4400件の救急搬送を受け入れ、近年では1市3町以外からの外来・入院患者が急激に増加しており、県南医療での当院の果たす役割と責任が一層高まる現況にあります。
 しかし、民間シンクタンクの調査によると医療機能が高度になるほど医療収支の赤字幅が大きくなり、慢性期・回復期・急性期・高度急性期と進むほど医療収支比率が悪化するとの報告があります。人口減少の著しい仙南医療圏の高齢者人口は横ばいが続き、全国と同様に救急搬送の6割以上が高齢者という状況に置かれています。当院は、将来的にも医療収支の別なく高度急性期及び救命救急医療等を担っていかなければなりません。一方では、生産年齢人口の減少が確実に進み、自治体の税収減少など財源確保に苦慮する事態は避けられない状況です。国・県による安定的な財政支援に加えて、救急医療等を享受する近隣市町からの財政負担の合意の確認が急務であると考えています。
 当院の『地域医療構想』を踏まえた果たすべき役割としては、(1)高度急性期・急性期医療機能の強化、(2)診療連携による救急医療体制の強化、(3)周産期医療の復活、(4)第2種感染症指定医療の体制整備、(5)地域がん診療連携拠点機能の強化等を掲げています。また、令和5年4月より公立刈田綜合病院が公設民営化に移行しましたが、今後の連携と役割分担が救急医療等の充実にとって重要な視点となる筈です。
 いずれにしろ、『人の命を守る』地域医療の使命を果たす最終的な後押しは、住民意識の高まりに他ならないと常々より考えてきました。2025年は間もなくですが、どの医療圏においても持続可能な医療提供体制の構築には、医療再編と機能連携が喫緊かつ重要な課題であると認識するところです。
                                             (9月19日記)

2023年9月28日 | コメント(0)

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