宮城県町村会、会長就任に思う。
~町村相互の強固な横のつながりを大切に、地域が活力にあふれ光輝く新時代を目指して~
去る5月19日開催の県町村長会議に於いて、『第28代宮城県町村会会長』に就任することとなりました。町村を取り巻く環境は一層複雑・多様化するなかで、人の絆や地域のつながりにも厳しい課題を抱えていると受け止めています。また、アフターコロナの社会像を見据えながら、町村相互の強固な結束が求められていると認識するところです。
先ず今後のコロナ禍への対応ですが、感染症法上の分類が5類に変更されたことにより、社会・経済活動にも大きな区切りが生まれました。医療供給体制の転換や感染リスクへの注意は必要ですが、社会全体の心理的な不安は解消されていく方向であることを実感しています。一方、コロナ禍への対応に於いても町村間の財政力の格差が浮き彫りになり、共通する課題への取り組みに温度差が生じていることが懸念されるようになりました。
何故なのか?最も大きな原因は、少子高齢化と同時に進む人口減少に歯止めがかからない現実にあると受け止めています。社会保障費は増加の一途を辿るなかで、経済の縮小や働き手の減少が町村の税収や行政機能の低下を招く悪循環に陥っている状況なのです。地方創生の目指す理念は大切な視点ですが、町村それぞれが持つ特徴を活かすことや広域連携が生む成果にも影を落としているようです。
そして、町村を取り巻く厳しい現実は、他にも格差の広がる現実を突き付けています。経済・雇用・情報・教育等に於いての広がりは、特に女性や子どもの貧困の顕在化・孤立化につながる深刻な状況です。また、社会的包摂の推進やSDGSの掲げる『誰一人取り残さない』取り組みに於いても、平均値からでは見えてこない行政課題が存在するものと考えているところです。
その他にも、昨今の町村の結束を困難にする課題も生まれています。一例として、物価高を受けた生活支援としての『給食費無償化』への取り組みがあります。県内では、小中学校の完全無償化・一部無償化を合わせ14市町が実施との報道がありました。義務教育の分野で自治体間の財政力や受け止めの違いにより格差が生じることに違和感を覚えています。本来無償化は、地域で子どもを育てる意義のもと住民サービスとして議論されるべきであり、国への結束した要望として制度の創設を求めて実現を図る必要があると考えています。
自治体は、もはや『経営』であることが明白な時代となりました。財政については、『入るを量りて出ずるを制す』精神が求められており、首長の責任も益々重大となっています。町村が持つ特徴を存分に活かしソフト面では大いに競い合いながらも、地方からの国づくりへの提言・要望は結束して行動することが求められていることを痛感するこの頃です。
県町村会100年の歴史を改めて胸に刻みながら、町村相互の強固な横のつながりのもと、アフターコロナの地域社会も共生意識を大切にしなければなりません。町村会の有り様を通して地域が活力にあふれ、光輝く新時代となるよう全力を尽くす所存です。
(5月22日記)