~新型コロナウイルス『デルタ型変異株』の脅威~
『終息』への期待から『共存』への転換を
新型コロナウイルス感染症の流行が始まって1年半以上が経過しましたが、終息の見通しは全く立たない状態が続いています。7月から首都圏で発生した『デルタ型変異株』の流行は、8月には略(ほぼ)全国に拡大し、8月中旬以降は連日増え続け2万人を大きく超える感染者となっています。ワクチン接種が進み流行が終息しつつあった欧米諸国でも再燃が見られ、先日の米国での1日の感染者が14万人・死者も千人を超えたとの報道があったばかりです。
日本では、8月末までに50%を超える国民が2度目のワクチン接種を終了するとのことです。しかし、従来のウイルスの2倍以上の感染力を持つとされるデルタ株の拡大によって、当初のコロナの流行予測は大きく崩れて今後の終息に向けた対応にも不安感が生じています。これから、さらにワクチンの接種率が高くなり70%を超えたとしても、集団免疫の獲得は困難との指摘もなされています。因(ちなみ)に、インフルエンザの集団免疫は60%で、感染力の強い麻疹(ましん)は90%以上とされています。デルタ株は、水痘(すいとう)症と同じ80%以上の人が免疫を持つ必要があるとの予測がありました。
但し、コロナワクチンには発症予防効果や重症化予防効果が認められていて、イスラエルや米国等の報告では感染予防の効果もあるとされていました。ところが、これらの国々での現状の感染拡大から、デルタ株に対しては感染予防効果の低下の可能性が指摘されているのです。つまり、ワクチンの2回接種だけでは集団免疫の獲得は困難なことを示唆するものなのかもしれません。今後の対応としては、『終息への期待ではなく共存への転換』が必要との声が日増しに高まる所以(ゆえん)と理解しているところです。
これまでの様に、緊急事態宣言等の発出を受けて、マスク着用・手指消毒・3密回避・人流抑制等の行動変容の徹底を促すことは重要ではありますが、集団免疫の獲得にはさらに年単位の期間が必要になるものと思えてなりません。何故この新型コロナウイルス感染症を、長年流行しているインフルエンザと同様なものに移行させることが出来ないのかと考えてしまいます。インフルエンザに対しては、私たちは一定の基礎免疫を持っているとされていて、治療薬等もあるため重症化することは稀(まれ)です。今後、この視点についての解明が進むとしても、現在の第5波の流行は感染拡大のピークすら予測出来ない状況ですので、当分の間はこの社会不安から逃れることは困難でしょう。今は、各人の予防対策の徹底や人流抑制への協力とワクチン接種の勧奨に頼らざるを得ない実情が残念でなりません。
さて、どの様な状況下でも行政に嫁(か)せられた最大の使命は、住民の『生命(いのち)と暮らしを守る』ことです。そして、医療の最前線で命懸けで頑張る関係者や、日常の生活に不可欠な仕事を担うエッセンシャルワーカーの皆様への感謝の気持ちを忘れてはなりません。今後とも、このコロナとの長い戦いに全身全霊を尽してまいる覚悟を改めて心に期したところです。
2021年8月21日記