2019年2月19日 町長コラム(広報おおがわら平成31年3月号「桜並木」)

「人はひとりでは生きられない」     ~一世紀を越えてたくましく生き抜いた田中トメさん~

宮城県保健福祉部が毎年発行する「データから見たみやぎの健康」の概要版が手元に届きました。

最初に取り上げられているのが健康寿命の市町村別状況でした。

その中でも、平均寿命から健康寿命を引いた不健康な期間の長さが示されていて、男女とも飛びぬけて短いのが大河原町となっています。

後期高齢者の健康診査の受診率の高さや、男女とも生活習慣病の保有率が低いことなどから考えると、特に高齢者の健康意識の高さは県下でも特筆ものであることが判ります。

本町の百歳を超える長寿のかたは現在9名ですが、大変残念なことに最高齢の田中トメさんが1月末に享年114歳で人生の幕を閉じました。トメさんは、大河原町食生活改善推進委員協議会(ヘルスメイト)の初代会長等を務められ、本町に様々な貢献をなされた有名なかたです。

活動開始当初は戦後間もなくで、「物のない時代。いかにして家族みんなで健康に生きていくか。」を課題として、保健所の指導の下、食について学びながら、住民にバランスのとれた食事づくりの伝達活動を行ったのでした。

また時には、町に栄養士配置の働きかけを行ったり、巡回指導用のキッチンカー購入資金を集めて歩いたりと、町民の健康を願って熱心な活動に奔走されたのです。

生来の資性温厚にして人格円満なお人柄から、常に町のために進んで骨身を惜しまない心の持ち主として誰もが認める存在でした。

また、この様なことから地域の皆さんからの信望も厚く、小中学校のPTA役員を永年務められたほか、大河原生活学級委員長を務めるなど、本町の教育の発展に寄与されました。

トメさんからの多額のご寄附は、町内小学校の児童用図書の購入費にあてられ「田中文庫」として今も広く活用されています。

改めてトメさんの郷土愛と教育への情熱に対し、心より感謝申し上げる次第です。

これは、トメさんがご主人とともに教員をされていた北海道夕張市での長屋暮らしのエピソードです。

「醤油貸してね。砂糖ある。出かけるから子守お願いね。」と、みんなで支えあい助けあって暮らすのが当たり前のことだったそうです。

当時を振り返りながら、「人はひとりでは生きられませんね。みんなで助けあうこと、そして感謝の気持ちも大切にね。」と、穏やかな口調でお話しされました。

一世紀を越えてたくましく生き抜いたトメさんのやさしい思いに、今も心が震えるような感動を覚えています。

現代社会にあって、社会的に孤立する人々に対し、人ひとりの存在を認めあい、つながりを持つような社会的包摂の理念の大切さを強く意識させられる思いです。

「笑ってすごす。それが一番」これはトメさんが110歳のお誕生日に記された言葉です。

お人柄を感じるとともに笑っているお姿が忍ばれます。

心よりご冥福をお祈り申し上げます。

2019年2月19日

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