「医療崩壊」・「自治体病院の経営破綻(はたん)」、最近、こんなニュースがマスコミで繰り返し取り沙汰(ざた)されています。みやぎ県南中核病院を管理する立場としては、決して他人事ではない危機感・焦燥感に襲われる毎日です。
そのようななか、「地域医療の再生と自治体病院の在り方」と題する講演会がオーガで開催されました。講師は、自治体病院の改革に関して顕著な活躍をされているだけでなく、経営破綻した夕張市立総合病院再建の経営アドバイザーを勤められたことでも有名な、城西大学の伊関友伸准教授でした。
講演の冒頭、伊関氏は会場を埋めた自治体病院関係者に対し「夕張病院の破綻は決して特殊な例ではなく、このようなケースは今後さらに増加する」と断言しました。医療崩壊に至る要因である医師不足の原因については、医師の絶対数が不足していることに加え、新人医師の専門分野に進む前の臨床研修制度が改正され、研修する病院を自由に選べるようになったことが挙げられます。その結果として、それまで自治体病院に医師を供給する役割にあった大学の医局の医師不足を招き、大学は系列の自治体病院に勤める医師を引き揚げざるをえないという状態を生みました。現在のところ、中核病院は、院長以下の努力もあってフルマッチ(定員の充足)状態を続けていますが、病院の魅力を高める努力無くして研修医は来ないという、決して楽観できない時代となったのです。
さらに、医師の大量退職を招く要因についての説明がありましたが、気になったのが、「住民のコンビニ感覚での夜間受診」ということでした。日々の過重労働に加え、常勤医師は、救急対応のためのオンコール体制(電話連絡により駆けつける体制)のなかで、休日でも出勤を余儀なくされることもあるのです。最初に1、2人が辞め、医局から補充がないまま、残った医師の負担が大きくなって一斉に退職する、という事態に至るケースも数多くあるようです。
しかし、このような地域医療崩壊の危機に直面しながらも、住民運動で医療崩壊を食い止めた実例も紹介されました。兵庫県立柏原(かいばら)病院では、「コンビニ受診をやめ、医師の負担を軽減して病院の存続を図ろう!」と母親たちが立ち上がり、疾病の初期対処方法の基礎知識を学んだり、医師増員を求める署名活動を展開したりしたのです。コンビニ受診の背景には、親の孤独感や不安があるといわれますが、親同士が集まり情報を共有することの意義も大きかったのではないでしょうか。高い住民意識が医療崩壊を食い止め、地域コミュニティを活性化させたのです。
伊関氏は、この事実を「地域医療の再生は、民主主義の再生につながる」希望の好例と講演を締めくくりました。医師不足の現実を抱えながらも、地域医療を守り抜くための大切な手立てがここに示されている、と強く感じた次第です。
(3月20日記)